本研究は、関節リウマチ(RA)の病態における骨髄細胞の遺伝子発現異常を解析し、RAの病因・病態を解明し新たな治療法を開発する事を目的としている。前年度までの研究において、RA例および対照疾患として変形性関節症(OA)例のCD34陽性骨髄細胞のmRNA発現量をリアルタイムPCR法にて測定したところFKBP5 (FK506-binding protein 5)遺伝子のmRNAがOA例に比べRA例で有意に強く発現している事を発見した。 FKBP5 mRNA発現量と各種患者背景因子との相関はなかった。また、炎症に関与する転写因子NFkBのmRNA発現量についても同様に検討したところ、OA例に比べRA例で強い発現が確認された。一方、健常者のCD34陽性骨髄細胞を炎症性サイトカインTNFαで刺激したところ、NFkBのmRNA発現量は増加したがFKBP5のmRNA発現量は増加しなかった。これらより、RA骨髄CD34陽性細胞におけるFKBP5 mRNAの発現亢進は治療薬や炎症による二次的変化ではなく、RAの病態によるものと確認された。 次にFKBP5遺伝子をマウス・マクロファージ様細胞RAW264.7にトランスフェクションし、同遺伝子の高発現株(stable transfectant)を作成した。このFKBP5発現クローンにおいて、NFkB発現量をルシフェラーゼアッセイ法にて測定したところ恒常的なNFkBの発現が確認された。しかし同クローンをTNFαで刺激したところ、有意なNFkB発現亢進は確認できなかった。同様に、IL (interleukin)-6や血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の発現量もcontrolと有意差を見いだせなかった。 しかし、クローンを約2週間培養したところ線維芽細胞様細胞への形態変化が確認された。これより、 NFkB活性化がこの形態変化に関与している可能性が示唆された。
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