研究概要 |
本年度は、前年度に明らかにしたFcεRIβ鎖欠損マウスでは抗II型コラーゲン自己抗体投与による関節炎が増悪されるメカニズムについて詳細な解析を行なった。まず、野生型およびFcεRIβ鎖を欠損するマスト細胞をマスト細胞欠損マウスに養子移入したマウスを用いた解析を行なったが、マスト細胞の滑膜への生着は認められたにもかかわらず、抗II型コラーゲン自己抗体投与による関節炎は誘導されなかった。そのため、FcεRIβ鎖欠損マウスにおける関節組織のより詳細な解析を行なった。解析の結果、骨破壊が生じている面積もFcεRIβ鎖欠損マウスにおいて野生型マウスの約2倍程度にまで増大しており、興味深いことにリンパ球の浸潤数がFcεRIβ鎖欠損マウスで有意に亢進していた。しかしながら、好中球の浸潤は野生型マウスとの間で顕著な違いは認められなかった。また、分子的機序を明らかにする目的でFcεRIβ鎖欠損マスト細胞におけるIgG受容体を介したTNF-alpha、IL-1beta,およびIL-6発現誘導能について解析を行なったところ、TNF-alpha、IL-6の発現誘導は野生型マスト細胞との間で顕著な違いは無かったが、IL-1beta発現はFcεRIβ鎖欠損マスト細胞において有意に増強されていることが明らかになった。以上の研究結果から、FcεRIβ鎖がIgG受容体を介したマスト細胞の活性化を負に制御していることが初めて示され、特に抗II型コラーゲン自己抗体による関節炎の発症に深く関与することが明らかになった。現在は、骨破壊のメカニズムに着目し、マスト細胞がこのメカニズムにどのように関与するのか破骨細胞とリンパ球の解析を進めている。
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