研究概要 |
今年度はまず、ヒト肺マスト細胞がPAF受容体を発現しているかどうかを検討した。ヒト肺から単離、精製したヒト肺マスト細胞をPAFで刺激すると、末梢血由来ヒト培養マスト細胞と同様に、PAFの濃度に依存したヒスタミン遊離が惹起され、PAF 10^-7, 10^-6 Mで著名なヒスタミン遊離が観察された。この結果より、ヒト肺マスト細胞がfunctionalなPAF受容体を発現していることが明らかになった。 次に、末梢血由来ヒト培養マスト細胞を用いてヒトマスト細胞におけるPAF受容体のシグナル伝達経路を解析した。末梢血由来ヒト培養マスト細胞においてPAF刺激によるヒスタミン遊離は、PAF受容体拮抗薬であるCV-6209、ホスホリパーゼC(PLC)の阻害剤であるU73122、プロテインキナーゼC(PKC)の阻害剤であるGo6976処置によって濃度依存的に抑制された。さらに、細胞内カルシウムイオンのキレーターであるBAPTA/AM処置によってもPAF刺激によるヒスタミン遊離が顕著に抑制された。これまでのPAF刺激によるヒスタミン遊離が百日咳菌毒素の前処置によって抑制されたことも踏まえると、ヒトマスト細胞において、PAFはGiタンパク質と共役したPAF受容体に結合し、PLC活性化、DAG、IP3の生成、細胞内カルシウムイオン濃度の増加、PKCの活性化を解してヒスタミン遊離を引き起こすことが明らかになった。 本年度の研究成果より、PAFによる肺マスト細胞の活性化は気管支喘息などのアレルギー性呼吸器疾患の発症に関与することが示唆され、PAF受容体拮抗薬がアレルギー性呼吸器疾患の新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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