前年度の引き続き、ヒトマスト細胞におけるPAF受容体のシグナル伝達経路について検討した。末梢血由来ヒト培養マスト細胞は、ホスホリパーゼC(PLC)β2、PLCγ1、PLCγ2を発現していた。 末梢血由来ヒト培養マスト細胞をPAFで刺激すると、PLCβ2の膜への移行、PLCγ1のリン酸化が観察された。IgE/anti-IgEで刺激した場合にもPLCβ2の膜への移行、PLCγ1のリン酸化が観察されたが、PLCβ2の膜への移行はIgE/anti-IgEよりもPAFでの刺激で強く誘導された。さらに、PAFによるヒスタミン遊離へのPLCβ2とPLCγ1の関与を明らかにするため、short hairpin RNAを用いてPLCβ2とPLCγ1をノックダウンした。PAFによるヒスタミン遊離はPLCβ2とPLCγ1のノックダウンによって顕著に抑制された。 また、PAFがIgE/anti-IgEによるヒスタミン遊離にどのような影響を及ぼすのかについても検討した。PAF (10^<-9>-10^<-8>M)は、IgE/anti-IgEによるヒスタミン遊離を相加的に増強した。 本年度の研究成果より、PAFはPLCβ2とPLCγ1を介して、ヒトのマスト細胞を活性化することが明らかになった。PAFによるヒト肺マスト細胞の活性化は、気管支喘息などの呼吸器疾患の病態形成に寄与していると考えられ、PAF受容体拮抗薬が気管支喘息などの呼吸器疾患の新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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