神経伝達物質はリンパ球表面の受容体を介して免疫修飾作用を発揮する。脳内の主要な神経伝達物質であるドパミンは、D1~D5までのサブタイプを持つ7回膜貫通型のGPCRを介してシグナルを転送する。我々はヒト単球由来樹状細胞もドパミンを合成・貯蔵し、抗原特異的な相互作用下で放出されたドパミンはナイーブT細胞表面のD1様受容体を介して、ヘルパーT細胞の分化バランスをTh2/Th17に偏向させることを明らかにした。 関節リウマチ(RA)においても樹状細胞は関節内の抗原をT細胞に提示して病態形成の初期から重要な役割を果たすことから、我々はRA滑膜組織におけるドパミンの機能的役割を評価した。 まず、RA患者由来滑膜組織において樹状細胞はドパミンを貯蔵していることを免疫化学染色で確認した。単球由来樹状細胞のD1様、D2様受容体を各阻害薬で阻害したところ、アロMLR評価系でナイーブCD4陽性T細胞は各々Th1、Th17に分化偏向した。SCID-huRAマウスに各阻害剤を投与し分離した組織において、D1様受容体阻害薬投与群では滑膜の退縮が顕著であったが、D2様受容体阻害薬群では軟骨破壊に加えて血管新生を伴う滑膜増生が顕著で、さらに血管周囲にはIL-17陽性細胞の高度の浸潤を認めた。RA滑膜組織におけるドパミン貯蔵樹状細胞の存在とSCID-huRAマウスに対する各受容体阻害剤の対照的な効果は、RAの病態形成におけるドパミンの機能的重要性と、RAの治療標的としての可能性を示唆した。
|