新しいイメージング技術を駆使して、関節リウマチや骨粗鬆症などの骨吸収性疾患の病理形成に中心的な役割を果たしている破骨細胞の分化・機能の生理的制御機構を解明し、新たな骨吸収抑制薬の創薬を目指す本計画研究の1年目にあたる平成20年度は、タイムラプス顕微鏡を用いた破骨細胞機能(分化・融合・遊走)の動的イメージングの基盤技術を整備して、安定的にこれらを測定するシステムを構築することに成功した。またこれにより、スフィンゴシン1リン酸やCXCL12などのケモカインによる破骨細胞遊走機能の制御について詳細な検討を行った。さらに、これらを標的とする薬剤を、卵巣摘出マウス(閉経後骨粗鬆症モデル)や、コラーゲン誘導関節炎マウスに投与して、これらのケモカイン標的薬剤が、病的骨吸収を有意に抑制することが分かり、新しい骨吸収抑制薬として期待できることが明らかになった。さらに破骨細胞の融合過程における細胞運動についてタイムラプス顕微鏡を用いた動的イメージングの検討を行い、破骨細胞の融合・多核化の際に、前駆細胞同士が精力的な遊走能を示すほかに、突起を出しあって融合を促進していることが分かり、さらに阻害剤を用いた解析により、この遊走・細胞運動が、破骨細胞前駆細胞によってオートクラインされるケモカインCCL3によって制御されていることを解明した。今後はさらに、これらの成果に基づいて破骨細胞を標的とする新たな作用機序の薬物開発を目指す。
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