研究概要 |
生体内で骨を融解・吸収する特殊な能力をもつ破骨細胞の分化・成熟・機能に残された多くの謎を解決するために、本計画研究では、破骨細胞の融合・巨細胞化機構、生理的調節機構、前駆細胞の骨表面への遊走調節機構の3つの具体的なポイントに絞り、動的イメージング技術を駆使し統合的な解明を行うと同時に、さらにこの成果に基づいて破骨細胞を標的とする新たな作用機序の薬物開発を目指した。特に2年目計画の2年目である本年度は、昨年度に得られた成果を元に、破骨細胞機能制御に関わる分子メカニズムの解明を目指すとともに、新たな骨吸収抑制薬の開発の可能性について詳細な検討を行った。本研究で明らかにした分子機構としては、脂質メディエーターS1Pによる破骨細胞前駆細胞の遊走・分化の制御、その他の骨髄内ケモカインによる破骨細胞の遊走・成熟の制御、分化誘導調節因子であるRGS18の機能発現、細胞融合調節因子であるテトラスパニンファミリーなどであるが、特にS1Pについては、そのアゴニストが、リンパ球のS1P1受容体に作用する免疫抑制剤として臨床応用されているが、本研究ではこれが破骨細胞前駆細胞の遊走を制御し、骨吸収を抑制することを動的イメージングを用いて明らかにした(Ishii et al., Nature, 2009)。さらに動物実験モデルなどを駆使して、骨吸収と自己免疫を併せ持つような関節リウマチの治療として極めて有効であることを証明した。本研究により、破骨細胞分化の生理的・病理的調節に関する多数の基礎的成果に留まらず、な臨床応用が照準に入った新たな骨免疫疾患治療薬の開発に道を拓く医学的成果をもたらされた。
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