研究課題
高病原性トリインフルエンザウイルスH5N1の病原メカニズムは未だ不明な点が多い。本研究ではインフルエンザの自然宿主であるブタ呼吸器上皮より分離した初代培養細胞を用いてH5N1の病原性を検討した。ブタ肺胞上皮より分離した初代培養細胞にA/Crow/Kyoto/53/2004(H5N1)、および対照として過去に分離されたH5型ウイルスA/Duck/Hong Kong/342/78(H5N2)、A/Duck/Hong Kong/820/80(H5N3)を感染させたところ、H5N1感染細胞でのみ強い細胞傷害性が認められそれはCaspaseに依存したアポトーシスであった。本研究においてはさらに本来アポトーシスを誘導しないH5N3にH5N1の遺伝子を導入したrecombinant H5N3(rH5N3)を作成し、そのアポトーシス誘導能を検討したところH5N1のHemagglutinin (HA)遺伝子をもつrH5N3で強い細胞傷害性とアポトーシス誘導が認められた。またHAの開列部位を易開列性に改変したvirulent H5N3を作成し同様の実験を行ったがwild typeと同様にアポトーシスは誘導しなかった。以上の結果よりH5N1のアポトーシス誘導能の1因子として少なくともそのHA遺伝子が関与していることがわかった。本来、細胞への吸着が主な役割と考えられているHA蛋白質がアポトーシス誘導に関与しているという報告は今までになく新たな知見でありウイルス学的にも意義深い。またニワトリの病原性と関係していると考えられているHA蛋白質の開列部位のアミノ酸配列は哺乳動物の呼吸器上皮細胞に対する細胞傷害性には直接的には関与していないことがわかった。現在はH5N1のHA蛋白質のどのアミノ酸がアポトーシス誘導に関与しているのかについてその領域の同定をすべく検討を行っている。
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Biochemical and Biophysical Research Communications 378
ページ: 197-202
Journal of Virology 82
ページ: 11294-11307