研究課題
前年度までの研究で高病原性トリインフルエンザウイルスであるA/Crow/Kyoto/53/2004(H5N1)は哺乳動物の呼吸器上皮としてのブタ初代肺胞上皮細胞にアポトーシスを誘導し、その誘導にはH5N1のHemagglutinin(HA)蛋白質が深く関与していることがわかった。本年度はH5N1のその他の遺伝子の関与について評価するために、リバースジェネティクス法によりそれぞれのH5N1の遺伝子を持つ各種ミュータントを作成しH5N1のHA以外の遺伝子のアポトーシス誘導への関与について検討を行った。各種recombinant H5N3(rH5N3)をブタ肺胞上皮細胞に感染させその細胞傷害性とアポトーシス誘導能について評価を行ったところH5N1のHA以外の遺伝子をもつrecombinant H5N3ではアポトーシスを誘導しないことがわかった。またさらにH5N1のHA蛋白質のうちアポトーシス誘導に関与するH5N1のHAのアミノ酸配列を同定するために本来アポトーシスを誘導しないH5N3とH5N1のHAとのキメラのHAを作成しこれをH5N3に導入しアポトーシス誘導に関与しているアミノ酸の同定を試みたところHAの81-340アミノ酸領域のみをH5N1に変えたH5N3のウイルスでアポトーシスの誘導が認められた。以上の結果よりブタ肺胞上皮細胞におけるH5N1のアポトーシス誘導にはそのHA蛋白質が主に関与ししかもその前半の81-340アミノ酸が重要である可能性が示唆された。現在はH5N1HA、H5N3HAの蛋白質立体構造上の違いと病原性との関連性について検討を行っている。またそれぞれのHA蛋白質と宿主内で相互作用する細胞死に関連した宿主因子について探索を行っている。
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