「研究概要」 申請者の属する研究室は、世界で最初に黄色ブドウ球菌3株(親株、耐性株、強毒株)の全ゲノムを決定し、比較ゲノム解析とMicroarrayを駆使した結果、種々の免疫系を撹乱すると予想される"免疫撹乱遺伝子群"を見出した。そして、それらの免役撹乱物質や毒素は、既存の機能に加え、新しい感染宿主免疫系の機序に関与していた事を明らかにした。本研究では、その黄色ブドウ球菌で見いだされた、種々の免疫系を撹乱すると予想される遺伝子群と、感染宿主免疫系との相互作用をin rivo皮膚炎発症マウス感染実験系で研究し、黄色ブドウ球菌の感染力の影響とアレルギー性皮膚炎増悪のメカニズムの本質に迫った。 「研究成果」 1) 黄色ブドウ球菌の免疫撹乱物質の同定。 2) 溶血毒素(βヘモリジン)が、従来から知られていた赤血球溶解の作用以外に、菌の細胞への定着性、及びリンパ球の細胞浸潤に関与している事が分かり、これより、毒素としての従来の概念が変わった。 3) 菌の表層外にある莢膜が、宿主病原性の作用機序に関与していた。 4) 菌由来ヒトMHCホモログが、宿主免疫系に対し、正または負の影響を与える宿主分子として見出された。これら4種類のMHCホモログの病原性の強度は、それぞれ異なっており、感染成立のメカニズムに影響している可能性が示唆された。 5) "NOAマウスによる皮膚定着マウスモデル(世界初)"を確立した。 6) 病原性遺伝子群のゲノムアロタイピングの確立。
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