研究概要 |
バイオフィルムに関連した感染症は多様であり、すべての細菌性感染症の65%以上が何らかの形でバイオフィルムに関連しているといわれている。また、これらの感染症は、難治性かつ重篤であり、社会的にも大きな問題である。バイオフィルムに対する有効な新しい治療法の開発のため、以下の研究を行った。 (1) ガリウム(Ga)についての検討:Gaは鉄の利用を阻害することで、細菌の増殖およびバイオフィルムの形成を阻害することが分かっており、その発展のため以下の研究を行った。 (1) Gaと抗菌薬との併用効果:抗菌薬との併用による、拮抗、相加、相乗効果。 浮遊菌に対する併用では、相加・相乗的な効果を示す抗菌薬は見いだせなかった。 (2) Gaの安全性:細胞毒性および動物実験による安全性の評価 細胞毒性に関する実験では、100μMの濃度でも細胞毒性を示さなかった。 動物に対しては、高濃度の溶液を吸入させた場合でも明らかな毒性を認めなかった。 (3) Gaの作用機序 トランスポゾンミュータゲネシスの結果、鉄輸送に関する遺伝子A,B,Cが耐性と関連していることが判明した。これらの欠損株は、浮遊菌状態ではGaに耐性を示すものの、バイオフィルムでは感受性が保たれていた。 (2) バイオフィルムにおけるストレス応答の役割 緑膿菌のトランスポゾンライブラリーを用いた検討で、amgRS遺伝子オペロンがトブラマイシン耐性に関与していることが明らかとなった。また、カンジダのバイオフィルムの耐性機序としてHsp90が関与していることが分かってきた。
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