平成20年度は、(1)C型肝炎ウイルス複製に関わるスフィンゴ脂質の同定、(2)スフィンゴ脂質の動態解析を行った。 (1)C型肝炎ウイルス複製に関わるスフィンゴ脂質の同定 HCVレプリコン細胞及びヒト肝臓型キメラマウスでのSPT阻害剤処理によるC型肝炎ウイルスに与える影響を検討した。すると、HCVレプリコン細胞において抑制効果を認め、さらにHCV感染動物モデルであるヒト肝臓型キメラマウスにおいて14日間で血中ウイルス量を1/100に抑制した。これは既存の治療薬であるPEG-IFNの効果が14日間で1/10であることを考えると、非常に強力な抗HCV効果であると考えられた。さらにはPEG-IFNやポリメラーゼ阻害薬と併用することで相乗効果を示した。以上の結果は、SPT阻害剤がC型肝炎ウイルスに対する有望な治療薬である強い可能性を示唆するものであった。 また、レプリコン細胞において、スフィンゴ脂質合成酵素の発現プラスミドを使用した強制発現系や、siRNAを使用したノックダウンを行うことにより、HCV複製に必要なスフィンゴ脂質を同定した。さらに、同定したスフィンゴ脂質の多くが、スフィンゴミエリンと同様に、HCVが複製している場と考えられているDRM分画に存在することを見出した。今後、同定したスフィンゴ脂質がHCV蛋白質にどのような影響を与えるのか解析していく予定である。 (2)スフィンゴ脂質の動態解析 各種阻害剤投与時の変化やsiRNAを使用したノックダウン実験からスフィンゴ脂質がセラミドを中心として恒常性を維持していることを細胞レベルおよび動物レベルで見出した。今後は、恒常性維持機構につき各種阻害剤とLC/MSでの定量系を中心に使用し解析を進める。
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