平成21年度は、(1)C型肝炎ウイルス(HCV)複製に関わるスフィンゴ脂質の同定、(2)HCV感染時のスフィンゴ脂質の動態解析を行った。 (1) C型肝炎ウイルス(HCV)複製に関わるスフィンゴ脂質の同定 昨年度までに、我々は各種阻害剤およびsiRNAによるノックダウンを行うことにより、我々がこれまで同定したスフィンゴミエリンのほかに、HCV複製に関与するスフィンゴ脂質を同定した。本年度、我々は、これらスフィンゴ脂質はHCV複製複合体が存在する界面活性剤不溶性画分に主として存在することを見出した。さらに、これらスフィンゴ脂質とHCV RNA dependent RNA polemeraseとの関係をin vitroで評価したところ、これらスフィンゴ脂質がRNA dependent RNA polemeraseを活性化することを見出した。以上の結果は、スフィンゴ脂質が新たな抗HCV薬の有望なターゲットになりうる可能性を示している。 (2) スフィンゴ脂質の動態解析 我々は、HCVの感染によりセラミドが増加すること、さらには増加したセラミドを代償するためにスフィンゴ脂質合成酵素を亢進し転換していることを見出した。その結果、HCV複製複合体が存在する界面活性剤不溶性画分のスフィンゴミエリンが増加し、HCVの生存環境を良好にしていることが判明した。
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