腎糸球体の上皮細胞接着装置であるスリット膜は尿を産生する際の濾過バリアーとして働いていることが知られている。私達はそのスリット膜構成成分NephrinやNeph1が糸球体上皮細胞の傷害時にチロシンリン酸化の修飾を受け、細胞内に様々なシグナルを伝達していることをこれまで明らかにしてきた。 2005年よりTRPC6というカルシウムチャネルの活性型変異により遺伝性のネフローゼ症候群が引き起こされることが報告され、糸球体上皮細胞のカルシウム代謝に注目が集まっているが、その疾患発症機序は不明であった。今回、質量分析器を用いた網羅的な結合蛋白質の解析によりTRPC6のリン酸化に伴い、TRPC6にNephrinおよびPLCγ1が結合し、PLCはTRPC6の細胞膜への移行およびチャネル活性に対して促進的に、Nephrinは抑制的に働くこと、すなわちTRPC6の糸球体上皮細胞特異的な活性制御メカニズムを明らかにした(投稿準備中)。 これらの成果は蛋白尿発症機序において最も重要性が高いとされている上皮細胞の傷害における細胞内カルシウム濃度の上昇機序を説明するものであり、その修飾による治療応用の可能性が示唆される。現在これらの成果を生かした蛋白尿の治療法の開発に取り組んでいる。
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