研究概要 |
小児急性リンパ性白血病(ALL)の予後は治療法の発達に伴い近年大きく改善しているが11q23転座型やPhiladelphia染色体を含む症例は未だ難治である。これらを含む腫瘍細胞に対してエピジェネティックに作用するヒストン脱アチル化阻害剤(HDAC inhibitor)細胞死や細胞周期停止を誘導することが知られているがその機序は不明な点が多く残っている。小児ALL細胞株に対するHDAC inhibitorの細胞死、細胞周期停止の誘導作用機序を解析した。この作用機序を解析することによりHDAC inhibitorが11q23転座を含む小児難治性急性白血病の治療薬としての有効性を検討する。 HDAC inhibitorの一つであるTSAを白血病細胞株に添加して各種解析を行った。 細胞死が誘導されることはAnnexin V-FITC/PI染色で確認し、細胞死に関連する蛋白をWestern blotting法を用いて解析した。TSAを白血病細胞株に添加することによりcaspase9, 3の断片化、Bcl-xlの発現低下、Bakの発現増加やBidの断片化を確認した。 細胞周期の停止はTSA投与後T-lineage ALLでG2/M期、B-precursor ALLでG0/G1期細胞周期停止を来すことがBrdU/PI染色による解析で確認できた。細胞周期停止に関する蛋白をWestern blotting法を用いて解析した。T-lineage ALLではリン酸化CDC25C、リン酸化CDC2の発現が増加することによりG2/M期での細胞周期停止が誘導され、B-precursor ALLではp21の発現増加によってG0/G1期での細胞周期停止が誘導されることが確認された。また、T-lineage、B-precursor ALLともCDK4、C-mycの発現が低下することが共通していた。
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