本研究の目的は、当研究室で溶液タンパク立体構造の決定を完了したMyD88と、MyD88と相互作用する受容体及びアダプター分子群の相互作用の詳細をNMR法または結晶化蛋白のX線解析によって構造生物学的に明らかにすることで、シグナルの流れを調節するような薬剤候補物質をスクリーニングすることである。特に、本年度は(1) MyD88-TIRとTIRAP-TIRの、動的相互作用の検討を行い、解離定数(Kd)を求めることに成功した。得られたKd=7.7μMであった。(2) 昨年度にTLR2-TIRとMyD88-TIRが直接結合すること、MyD88変異体群を使用したReporter gene assayからTLR1/2シグナル系で使用されるMyD88の機能的残基が、TLR4シグナルと共通していることが判明したいたが、今年度はさらにTIRAPとMyD88との直接結合部位が、TLR2とMyD88の直接結合にも使用されていることが判明した。(3) TIRAP-TIRドメインの結晶化スクリーニングを継続している。TIRAP-TIRは溶液中で自己多量体化する性質があるためか、現在のところ結晶化には至っていない。(4) 有力な薬剤候補分子としてMyD88シグナル阻害作用を有するとされるMyD88-BB loopペプチドと、TIRAPとの相互作用実験を行うために、まずTIRAP-TIRのNMR2次元スペクトルの改善が必要である。TIRAPの自己会合抑制のため複数のアミノ酸置換変異導入体を構築した。(5) MyD88を介するシグナル抑制作用が期待できるMyD88ドミナントネガティブ変異分子に細胞内タンパク導入ドメイン(PTD)を付加したPTD-MyD88-DNの構築を行った。
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