研究概要 |
FCMDにおけるスプライシング異常の標的配列を決定するために、挿入変異をはさむPCR反応により、産生される患者由来のスプライシング産物を直接シークエンス法にて塩基配列を決定した。この結果によると、この異常スプライシングは、挿入配列内に存在する強力な潜在的スプライシング受容サイトが、蛋白質をコードする最終エクソン内の潜在的スプライシング供与サイトを新たに活性化することが原因となっていることが予測された。そこでこの挿入変異を有するfukutin cDNAコンストラクトに変異を導入し、異常スプライシングが阻止されることより、このスプライシング供与部位、受与部位およびスプライシング促進配列が標的配列であるとの予測を立てた。これらの配列を標的とするアンチセンス治療化合物(20メチルRNA,モルフォリノオリゴ等)を標的配列の周囲に網羅的に設計、合成し、細胞内(患者由来リンパ芽球や、線維芽細胞)へ核酸化合物を導入し、RT-PCR法を用い、スプライシング是正効果のある配列を選別し、至適な配列を同定中である。 次に、SVA挿入型fukutinコンストラクトの、正常における翻訳領域の下流にレポーター遺伝子を導入したコンストラクトを作成し、その3'側に挿入変異を導入し、異常スプライシングのモデルを作成し、一過性強制発現において、患者同様の異常スプライシングが導入されることを確認し、細胞内安定発現細胞株を構築した。この細胞株に標的化合物を投与し、異常スプライシングが是正され、正常のfukutinの翻訳が回復すると、細胞はレポーターと融合し正常fukutinを発現する。このアッセイ系を用い、レポーター遺伝子の発現の程度を測定することで、今後は低分子化合物ライブラリーより、有効化合物の治療効果を評価する予定である。またそれぞれの核酸化合物の毒性の検討を細胞系を用い行った。これらの結果を踏まえ、細胞レベル、動物レベルでのスプライシング是正効果(mRNAレベル及び蛋白レベル)を検討してゆく。
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