本研究は、ステロイドとジストロフィン遺伝子のスプライシングとの関連について解析し、ステロイドがスプライシングを修飾し、ジストロフィンを発現させる可能性を検討することにより、ステロイドの新たな作用機序を明らかにしようとするものである。 平成20年度は、まず、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者で同定された9種類のジストロフィン遺伝子変異を対象とし、この変異および正常を有する配列を導入したミニジーンを作成した。さらに、作成したミニジーンをHeLa細胞へトランスフェクションし、ステロイド(プレドニゾロン)を投与し24時間培養した後、RNAを抽出し、RT-PCR法を用いてスプライシングの変化を検討した。その結果、正常な配列、および、9種類の変異を導入したミニジーンのいずれにおいても、ステロイド投与によるスプライシングの変化は認められなかった。 そこで、スプライシングへ影響を与えることが予想される他の4種類の薬剤(TG003、kinetin riboside、EAAT2、3-NP)をそれぞれ添加し、同様の解析を行った。その結果、エクソン31内にナンセンス変異を有する配列を導入したミニジーンをHela細胞にトランスフェクションしTG003を投与した場合に、スプライシングが変化し、エクソン31のスキッピングが誘導されることが明らかとなった。さらに、エクソン31内にナンセンス変異を有する配列を導入したミニジーンを培養筋細胞にトランスフェクションしTG003を投与した場合も、エクソン31のスキッピングが誘導されていた。 平成20年度の研究では、ステロイドによるスプライシング修飾は認められなかったが、ジストロフィン遺伝子における特定の変異に対し、TG003を投与することによってスプライシングの変化が誘導されることを明らかにした。
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