本研究では骨髄間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell : MSC)の組織ターゲッティング能力、ならびに一部の腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導効果に着目し、小児難治性悪性腫瘍であるMSC由来のユーイング肉腫に対する正常MSCの腫瘍細胞障害効果と薬剤感受性について検討することを目的としている。すなわち、(1)正常MSCのユーイング肉腫に対する抗腫瘍効果(2)MSCとの共存によって抗腫瘍剤やビスフォスフォネートの抗腫瘍効果が増幅されないかについての検討、を行いたいと考えた。また、ユーイング肉腫ではNF-κB活性化受容体リガンド(RANKL)の高発現が報告されており、薬剤として抗腫瘍剤に加えビスフォスフォネートを使用した。本研究によってMSCによる抗腫瘍効果を証明し、予後不良である本疾患に新たな治療戦略を確立する可能性が期待される。 本年度はin vitroの系でMSCのユーイング肉腫に対する抗腫瘍効果を検討した。AnnexinV陽性細胞をフローサイトメーター(FCM)で測定し、Apoptosis assayを行い評価した。ユーイング肉腫細胞株に(1)抗腫瘍剤、ビスフォスフォネートを投与し抗腫瘍効果を測定(2)MSC株(TaKaRa PT-2501)を投与し抗腫瘍効果を測定(3)MSC株と薬剤を投与しMSCの存在が薬剤の抗腫瘍効果に影響するかを検討した。 MSCのみの投与では本年度の検討では有意な抗腫瘍効果はみとめられなかった。しかしMSCの共存により抗腫瘍剤やビスフォスフォネートの効果が増強する傾向がみられた。この結果からMSCのみでは有意な抗腫瘍効果が得られないが、MSCを抗腫瘍剤に添加することによって抗腫瘍効果の増強をもたらすことが示唆された。来年度は例数を増やし、これらの結果を確立することとその機序についてのさらなる検討、さらにin vivoでの検討を施行する。
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