我々は線維芽細胞増殖因子受容体3型(FGFR3)の変異によっておこる、軟骨無形成症の近位有意な四肢短縮型低身長を改善する新たな治療法を模索してきた。その過程で副甲状腺ホルモン(PTH)が軟骨無形成症モデルマウス(AchTg ; Naskiet. al. Development 1998Dec ; 125 (24) : 4977-88)の新生仔の大腿骨を伸長させる効果があることを大腿骨器官培養によって明らかにすることができた(Ueda et.al. Bone 41 (2007) 13-18)ことなどからPTHには軟骨無形成症に対する治療薬となりうる可能性があると考えた。そこで、平成20年度はin vitroでのPTHの四肢の伸長効果を確認する目的で、生後1週から3週まで2目に1回2週間の0.1および1μg/KgのPTHもしくは生理食塩水を野生型マウスおよびAchTgへの投与を行い、0.1μg/KgのPTHの投与において有意にAchTgの大腿骨の伸長効果を認めた。このことから次に長期的な投与としてPTHの0.1μg/Kgで4週間の投与を行い、この実験においてもPTHを投与したAchTgの大腿骨において有意な伸長効果を得ることができた。 本年度はFGFR3関連疾患疑い患者の遺伝子診断を11検体行い、そのうち軟骨無形成症で認められるG380R変異を4例、軟骨低形成症に認められるN540K変異を1例同定した。これらの患児および当院通院中の患児たち(軟骨無形成症2名、軟骨低形成症1名)の成長ホルモンによる治療前からの頭蓋骨早期癒合症の合併の有無についての臨床情報の収集を行ったが、実際の患者において治療前からの頭蓋骨早期癒合症は認められず、昨年度及び本年度を合わせて治療前の頭蓋骨早期癒合症は認められなかった。
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