現在、12~18才54名(男子22名、女子32名)の小児うつ病患者に対し、WISCによる知能検査、包括的質問紙Youth Self Report(YRS)、Child Behavior Checklist(CBCL)、SDSうつスコア、バールソンの抑うつ傾向自己記入式評価尺度(DSRSC)によるうつ病の評価を行ったうえ、血液サンプルを用い、5HTTLPRのs型、1型の同定を行っている。6週間~8週間の抗うつ薬、主にfuluvoxamin(50-150mg/日)とparoxetine(10-30mg/日)の投与後、SDSうつスコア、バールソンの抑うつ傾向自己記入式評価尺度(DSRSC)による改善率とfuluvoxaminとparoxetineなど個々の薬剤の有効性、有害自事象の発現に及ぼす5HTTLPRの影響について検討を加えている。有害自事象は嘔気が最も多く、動悸など他の事象を含めると約10%に認められたが、遺伝子多型との明確な関連は得られていない。治療反応性(治療効果)、有害自事象の発現に及ぼす5HTTLPRの影響についてさらに明確にし、適切な薬物選択、使用を可能にすることが今年度の課題であり、抗うつ薬治療の客観的予測指標を設定し、無駄な長期投与やそれに伴う小児の成長や発達、内分泌機能への影響も回避し、有効な抗うつ薬治療を目指す。 小児の脳発達における「敏感期(Sensitive Period)」を解明するために、小児うつ病を発症した年齢によって患児たちの脳が受ける影響がどのように違うのかを3T-MRIで獲得された小児うつ病の患者の脳を対象に脳皮質の厚さ・表面積を詳細に計測できる、脳皮質解析(FreeSurfer)を用いて、発症年齢の違いによる脳の容積および皮質の厚さなどを検討する。
|