本研究では本年度、ラット唾液腺由来前駆細胞(ラットSGP)をインスリン分泌細胞に分化誘導した後、糖尿病/免疫不全マウス(AKITA/SCIDマウス)への細胞移植を行い、移植効果を検討した。【方法】ドナー細胞はラット唾液腺由来前駆細胞を用いた。レシピエントにはAKITA/SCIDマウス(6〜8週齢、メス、移植群n=3 ; コントロール群n=3)を用いた。前駆細胞はNewport Green(NG)を用いて染色を行い、フローサイトメトリー法で陽性細胞分画を採取した。採取したNG陽性細胞はGLP-1含有分化誘導培地にて分化誘導した後にインスリン分泌試験を行った。インスリン分泌能の評価はELISA法を用いておこなった。インスリン分泌量が多い細胞群を選択し、体重100g当たり移植細胞数1x10^6の割合で腎皮膜下に移植した。移植後の血糖変化を経時的に測定した。【成績】ラット唾液腺由来前駆細胞を当研究室で合成した特殊無血清培地を用いて培養した。この調整培地によるβ細胞への分化誘導効率は全細胞の30%程度であった。更に、Newport Green DCF(Molecular Probes)を用いてインスリン陽性細胞を蛍光染色した。このインスリンを含有したインスリン陽性細胞をFACSvantage SEを用いて陽性細胞分画だけを分離した。この細胞を培養し増殖させた。培養には分化誘導特殊培地を用いた(内容は明らかにできない)。更にELISA法を用いてインスリン分泌量の多い細胞を判別し、増殖させた。これにより最もインスリン分泌能の高い細胞集団が得られた。この高インスリン分泌ラットSGPを用いてAKITA/SCIDマウスの腎皮膜下へ移植実験を行った。その結果、移植した全ての個体で血糖が改善した(558±68.7vs. 323±111、p<0.001)。
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