対象と方法:対象は当院小児科にてフォロー中のHCV母子感染患者4例及びそれぞれの母親。採取した血液は凝固後、直ちに遠心し、RNA抽出時まで凍結保存した。解析時、保存血清よりSepaGene(三光純薬)を用い、添付のマニュアルに従いHCV RNAを抽出した。抽出したRNA、random primer及び逆転写酵素を用い、逆転写を実施しcDNAを作成後、NS5b領域に設定したprimer及び、FastTaqを用い、nested PCR法で増幅した。増幅産物は、3%アガロースゲルで泳動後、陽性バンドからDNAを切り出した。切り出したDNA、2ndPCRで用いた2組のprimer、BigDye Kit(Applied BioSystems)にて、Sequence反応を実施し、Sequence解析装置で、目的領域の塩基配列を両方向から決定した(Direct Sequence法)。塩基配列の変化速度をそれぞれの母子間で比較した。決定した塩基配列から、遺伝子解析ソフトであるMEGA4を用いて分子系統樹を作成した。 結果:児E、F、Gの塩基置換速度(substitution/base/year*10-3)はそれぞれ、0.00、0.00、0.00で、母E、F、Gはそれぞれ8.93、0.00、0.00、2.10であった。分枝系統樹では母子由来の株はそれぞれ同じ枝内にあった。 考察:母における変化速度の方が早い傾向がみられ、宿主のimmune pressureの違いを反映していると推定された。分枝系統樹上、母子由来の株はそれぞれ同じ枝内にあり、母子感染として矛盾しなかった。臨床経過とHCVの塩基置換速度との関係については明らかなものは認めなかった。
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