ネフローゼ症候群で、糸球体係蹄壁のバリア機能が破綻し、タンパク尿が発現する機序はほとんど解明されていない。特発性ネフローゼ症候群を含む後天性腎疾患では、細胞膜に存在するべきネフリンの細胞質内異常蓄積現象が確認されており、小胞体ストレスによるネフリンの輸送障害、病的細胞質内蓄積によると推測されている。しかし、これまでのところヒトにおける後天性腎疾患での小胞体ストレスの有無の検討はなされておらず、今回小児ネフローゼ症候群における小胞体ストレスの有無を明らかにすることを具体的な目的とする。 今年度は臨床的に得られた腎生検検体を用いるための倫理審査を完了し、症例の蓄積を行った。小胞体ストレス応答としてUPR (unfolded protein response)により活性化される分子シャペロンGRP78とGRP94の発現の検討をタンパクレベルで検討し、ネフローゼ症候群における異常を確認した。今年度の新たな知見として薬剤使用との関連が示唆されており、臨床上特に有用と考えられる。 今後、小胞体ストレスを示すネフリンの局在をネフリン抗体により検討し、さらにネフリンの合成状況をRT-PCR法により検討する。UPR (unfolded protein response)により活性化される分子シャペロンを遺伝子レベルでも検討する。また小胞体関連分解に重要なユビキチン化を抗ユビキチン抗体で検出する。さらに小胞体ストレス関連としてアポトーシスを評価すると共に、抗活性型caspase-3抗体、抗caspase-12抗体を用いてアポトーシスの状況を検討した。
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