研究概要 |
本研究では小児血球貪食症候群の病態にヘムオキシゲナーゼ-1が関与しているという仮説を検証するためその遺伝子多型,血清ヘムオキシゲナーゼ-1値について検討した.ヘムオキシゲナーゼ-1遺伝子多型は従来検討されているリピート数について,患者群43例.正常コントロール群100例について検討した..また,血球貪食症候群39例の発症時血清についてヘムオキシゲナーゼ-1値を測定した.遺伝子多型については患者群と正常コントロール群に有意差はみられず,遺伝子多型と臨床症状,検査値に有意な相関はみられなかった.血清ヘムオキシゲナーゼ値は対照ウイルス感染症群(RSウイルス感染症,A型インフルエンザウイルス感染症)と比較しそ高値を示した.また.血清LDH値.可溶性IL2レセプター値と相関がみられた.検討した患者群に死亡例はなかったため予後と血清ヘムオキシゲナーゼ値との相関は明らかではなかったが,小児血球貪食症候群において血清ヘムオキシゲナーゼ値は臟器障害の程度と相関し,重症度の指標となる可能性が示唆された.小児血球貪食症候群の重症度は自然治癒するものから造血細胞移植を必要とするものまで様々であり,診断後治療方針の決定に重症度予測が必要である.現在までのところ小児血球貪食症候群の重症度マーカーとして血清フェリチン値,可溶性IL2レセプター値が報告されているが血清ヘムオキシゲナーゼ値も重症度の指標となり治療方針決定に有用であると思われた.
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