研究概要 |
小児血管腫症例においては、血管内皮前駆細胞(Endothelial progenitor cells : EPC)や病的血管新生に関与するVEGFR2のリガンドであるVEGF(vascular endothelial growth factor)、VEGF-B、またVEGFR3のリガンドであるVEGF-C、VEGF-Dの発現と血管腫の増悪消退に伴う変動を検討した報告はなく、小児の血管腫症例におけるEPC、VEGFおよびVEGF-Cの動態を検討することは、血管腫の増悪機序の解明につながると考え、また難治性血管腫症例の新たな治療法の開発に結びつけることを目的とし本研究を行った。本年度は当院で血管腫と診断された苺状血管腫やSturge-Weber症候群を含めた単純性血管腫およびWilms腫瘍の1症例を含め1年間に34検体を採取した。いずれも凝固異常はなく、Kasabach-Merritt症候群を合併した症例はなかった。診断時および3か月毎に採取した血清を用いてenzyme-linked immunosorbent assay(ELISA)法にてVEGF-Cを計時的に測定した。VEGF-Cはhuman VEGF-C ELISAキット(R&D Systems, Inc)を使用した。計測した16検体中、血管腫は12検体で、VEGF-Cの血中濃度は2200-9800pg/ml、平均5610pg/mlだった。また同時に、小児悪性腫瘍において頻度の高い白血病や、神経芽細胞腫等の固形腫瘍、悪性リンパ腫においても、VEGF, VEGF-Cの動態を検討することで血管新生の悪性腫瘍における増大や再発機序の解明につながると考えpreliminaryであるがWilms腫瘍症例(stage4)の検討も行った。Wilms腫瘍の4検体の測定を行い平均は4637pg/mlだった。今後は更に血管腫症例の検体を増やし、VEGF-C以外のVEGF、VEGF-B、VEGF-Dの測定も行い血管腫の病態につき検討を進める。
|