研究概要 |
小児血管腫の増悪におけるVEGF(A-D)の役割を解明する目的で本研究を行っているが、最近、小児神経芽腫においても、腫瘍伸展度とVEGF発現について相関があるという報告があり(J Exp Clin cancer Res 2009,28,143)、本年度は血管腫患者13名に加え、小児固形腫瘍であるWilms腫瘍StageIV患者1名、神経芽細胞腫StageI患者1名に対象者を拡大し、2年間に65検体を採取した。また、VEGF-A,Dについては、健常者(遺伝性球状赤血球症や鉄欠乏性貧血といった非腫瘍性疾患)11名についても検体採取し、同時に測定を行った。いずれも凝固異常はなかった。採取した血清を用いてELISA法(human ELISAキット;R & D Systems,Inc)にてVEGF-A, C, Dを計時的に測定した。 VEGF-Aについては、健常者45-400pg/mlに対し、血管腫患者は、発症時は500pg/ml、以後150-450pg/mlで、発症時は健常者より軽度上昇し、退縮期には平均値が低下する傾向があった。血管腫の大きさとVEGF-A濃度に相関は見られなかった。Wilms腫瘍については、腫瘍摘出前150pg/ml、以後数値はほぼ一定しており、健常者と比較し有意差は見られなかった。神経芽腫については、腫瘍摘出前900pg/mlと上昇し、過去の報告と一致していたが、腫瘍摘出1か月後は1200pg/mlに上昇し、2か月後800pg/mlと、摘出前に高値で手術後も一過性の上昇が見られた。 VEGF-Cについては、血管腫患者350-900pg/ml、Wilms腫瘍90-800pg/ml、神経芽腫の腫瘍摘出前600pg/ml、1か月後1000pg/ml、2か月後700pg/mlであった。結果にばらつきがあり、更に検体数を増やし検討が必要と考えた。VEGF-Dについては、現時点では健常者と対象者に差が見られていない。来年度は、更に検体数を増やし、結果発表を予定する。
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