研究概要 |
小児血管腫および固形腫瘍における血管内皮増殖因子群の役割を解明する目的で、本年度は血管腫患者13名に加え、神経芽細胞腫Stage I患者1名、Wilms腫瘍Stage IV患者1名も検体採取しELISA法でVEGF-A,C,Dを計時的に測定した。VEGF-A,Dについては、健常者(遺伝性球状赤血球症や鉄欠乏性貧血といった非腫瘍性疾患)11名についても検体採取し、測定を行った。 VEGF-Aについては、血管腫患者が296.7±173.5pg/ml、健常者が120.8±95.7pg/mlと血管腫患者において有意に上昇していた(P<0.05)。苺状血管腫を有した同一患者について、経時的な検討では、大きさと数値の相関はなかった。神経芽細胞腫の患者は、同一患者で複数回測定し、健常者と比較した。神経芽細胞腫患者は883.3±104.0pg/mlと、健常者と比較し有意に上昇していた(P<0.05)。神経芽細胞腫患者において、摘出前と摘出後1か月、2か月については、いずれもVEGF-Aが上昇しており、(摘出前850pg/ml、1か月後1000pg/ml、2か月後800pg/ml)摘出直後に数値の正常化は得られなかった。このことから、微小残存病変があった場合、再増大の危険性があることが推測された。神経芽細胞腫については、cell lineでVEGF(-A)のモノクローナル抗体であるbevacizumabの有効性が報告されており、今後、検体数を増やし、今後の治療に反映させることが期待されると考えた。Wilms腫瘍患者については、同様に1名の患者から複数回測定したが、173.4±145pg/mlと、健常者との有意差はなかった。VEGF-Dについては血管腫患者が348.7±149.7pg/ml、健常者は456.3±179.0pg/mlと、むしろ血管腫患者の方が低下している傾向にあった(P=0.08)。VEGF-Cについては、血管腫患者が767.9±537.8pg/ml、神経芽細胞腫患者が712.5±256.1pg/ml、Wilms腫瘍患者が354.5±299.6pg/mlと、血管腫と神経芽細胞腫患者がやや数値が上昇している傾向があった。このためVEGF-C/VEGFR3のシグナルの抑制が治療のターゲットになる可能性もあり今後症例を蓄積して検討したい。
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