本研究では、神経前駆細胞の分化誘導に重要な細胞周期調節遺伝子のひとつである、サイクリン依存性キナーゼ(CDK)抑制因子p27^<Kip1>の発現調節に重要な転写因子を同定する。さらにp27^<Kip1>の細胞内局在調節のメカニズムの解明を目指す。 神経前駆細胞では大脳皮質発生が進むに従いp27^<Kip1>が細胞核内において増加する。その際、転写因子FOXO1aおよびFOXO3aが、発生時期が進むにつれて増加することが予備実験で判明していた。FOXO1aおよびFOXO3aの核内増加パターンは、p27^<Kip1> mRNAの神経前駆細胞での発現パターンと一致するため、本年度は、大脳皮質発生各段階の神経前駆細胞および分化を完了した神経細胞の核抽出液を準備し、p27^<Kip1>遺伝子5'非翻訳領域ブロモーター配列をプローブとしたgel shift assay実験を行った。 CD-1マウスを交配、妊娠10-16日目の胎仔を摘出し、実体顕微鏡下で胎児前脳の頭頂部を眼科用剪刀で切断後、神経前駆細胞が存在する脳室帯を分離した。分離組織をピペッターで機械的に破砕後、界面活性剤を含まない溶解バッファを加え、ペレットペッスルで機械的に細胞膜を破壊した。その際細胞核を破壊しないよう、細胞核を染色可能なクレシルバイオレット染色液によりサンプルの一部を染色、顕微鏡下で細胞核成分が破壊されていないことを確認した。サンプルを遠心分離し細胞核成分と細胞質成分を調整した。 上記サンプルとp27^<Kip1>プロモーター領域のDNA断片をビオチンで標識したプローブを反応させ、FOXO1a、FOXO3aに対する抗体を混合しビオチン化プローブ用EMSAキットを用いたGel Shift Assayを行った。しかし、平成20年度中に反応条件の最適化を完了することができなかった。原因として抗体がGel Shift Assayに適さない可能性や、結合バッファの組成が最適ではない可能性が考えられた。
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