研究の目的は、川崎病モデルにおけるARBの冠動脈に与える有益性を明らかにする事で、今後ARBが治療的介入目的で利用しうる合理的な薬剤のひとつとなる可能性を証明することである。 川崎病モデルマウスについて : Wesley C. Chan等の報告を参考にして(J Immunol. 2004 ; 173(5) : 3492-503)LCWE誘導性マウスの冠動脈炎を証明する試みを行った。同論文によると4週令の雄のC57BL/6 back groundマウスの腹腔内に1mg/ml(PBS)のLactobacillus caseiwall-extract(LCWE)を注入すると14〜56日目(2〜8週後)に約69%の頻度で組織学的な冠動脈炎の所見が得られるとの報告であった我々の最初の試みではLCWE濃度は500μg/mlと半分の濃度しか得られず、同様のマウスを使用し腹腔内注射を行った。しかし注射4〜6週間後(冠動脈炎が最大限に増悪する時期)であっても組織学的な冠動脈炎の所見(H&E染色で血管周囲のリンパ球浸潤、EVG染色で弾性線維の断裂など)は得ることが出来なかった(4week post-injection<n=5>、6week post-injection<n=5>)。 次にLactobacillus Caseiの量を倍として試みた。最終的なLCWE濃度は700μg/mlまで上昇させることに成功し同様に8匹の4週令の雄のマウスの腹腔内に注射し4週後(n=4)、6週後(n=4)に窒息死し各群で組織学的な検討を行った。6週後の1匹で(10%)明らかな冠動脈炎(HE染色にて冠動脈周囲のリンパ球の浸潤)の所見を得ることに成功した。しかし70%近くのマウスでこのような所見が得られることが必要であり、菌体の量をさらに増やすべきか、あるいはLCWEの採取効率を上げる方法があるかについて直接論文著者(Thmas J. A Lehman)に問い合わせている段階である。 次年度ではまず川崎病モデルマウスを作製し研究目的である本筋に入ることを計画している。
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