研究課題
川崎病は小児科医の川崎富作先生が1967年に初めて報告した小児期に好発する血管炎症候群で、現在先進国において後天性心疾患の最大の原因である。近年自然免疫応答を誘導する重要な分子としてToll-Like Receptor(TLR)が注目されている。TLRは外界から生体内に異物が侵入してきた際、免疫担当細胞が最初に抗原を認識する際に必須の受容体であり、2005年にLehmanらがノックアウトマウスを用いた川崎病類似血管炎モデルにおいて、TLR 2とMyD88が血管炎成立に必須であることを報告した。多種多様な病原体がいずれも川崎病発症に関与すると仮定すれば、もともと患者側に存在しているTLRの反応性の異常により、多種多様の病原体によって血管炎が惹起されるといった説を十分説明することが可能である。今回我々は「川崎病は多種多様の病原体への感染を契機に、Toll-Like Receptorの機能的異常によって血管炎が成立する」といった仮説を立てた。そこで急性期川崎病患者単核球からmRNAを抽出し、TLRのシグナル伝達を網羅的に解析することによって、川崎病発症につながる病因、病態について検討を行った。平成22年度は川崎病患者の検体を用いて遺伝子発現の解析を実施した。急性期川崎病患者全血より単球をMACSを用いて分離、Taq Man Assayを用いて単球のmRNAを抽出後、mRNAをcRNAに合成、得られたcRNAをHuman TOLL-LIKE RECEPTORS PATHWAYを用いてToll-like receptorシグナル伝達に関連する分子の発現を解析し正常コントロールとの比較を行った。川崎病患者においてはCD14・IRF7・CREB3・IL1RL1の発現が亢進しており、TLR6・TICAM2・UBE2N・TLR9・LBPの発現は逆に低下していることが明らかとなった。今回家族の同意を得て収集できたサンプルは少数であったため、今後症例数を増やしさらなる検索を進める。
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