川崎病は全身性の難治性血管炎を発症し、冠動脈瘤を併発する小児期特有の急性熱疾患であり、急性期に血中TNF-α濃度が上昇する。最近、L. caseiの細胞壁抽出物(LCWE)をマウス腹腔に投与した川崎病モデルマウスを用い、TNF-αが冠動脈瘤形成の鍵を握ることが報告された。TNF-αは食細胞や血管内皮細胞の活性酸素生成能を亢進させるが、亢進した好中球(Nox2型NADPH oxidase)由来の活性酸素が血管内皮細胞でのICAM-1発現を促し、好中球の血管外遊出を促進する可能性が報告されている。しかし、Noxに対する阻害剤や還元剤を用いた間接実験で直接的な証明はない。血管外遊出した好中球はエラスターゼを放出するため、冠動脈瘤形成に至るエラスチン断裂に大きく関与すると考えられる。 冠動脈瘤発症のタイムスケジュールとして、先ず感染によるTNF-α産生、次に血中TNF-αによる血管内皮細胞でのICAM-1発現が考えられる。本年度は、これらの現象に好中球およびマクロファージ由来の活性酸素が関与するか川崎病モデルマウスを作製し、Nox2-KOマウスに適用して解析した。LCWE投与後、脾臓に於けるTNF-α発現をreal-time PCRで解析した結果、野生型マウスでは4時間後に一過性の上昇が認められたが、Nox2-KOマウスでは僅かであった。更に、LCWE投与4時間および24時間後、野生型マウス心臓に於けるICAM-1発現は上昇したが、Nox2-KOマウスでは有意に低かった。しかし、TNF-αを直接投与した場合、両マウスに違いは認められなかった。従って、好中球由来の活性酸素ではなく、TNF-αが直接血管内皮細胞のICAM-1発現を促すことが明らかになった。更に、マクロファージからのTNF-α産生にNox2由来の活性酸素が関与し、川崎病の発症に関連する可能性が示唆された。
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