研究課題
近年、小児難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ(抗CD20モノクローナル抗体)の有効性が報告されているが、その作用機序は不明である。本研究では、リツキシマブ投与前後の末梢血リンパ球の表面抗原の発現や遺伝子発現やサイトカインを主とする遺伝子発現の変化を最新の方法で解析、臨床所見との関係を検討し、これまで注目されていなかったB細胞の関与という新たな視点からリツキシマブの作用機序および小児ネフローゼ症候群の病因・病態を解明することを目的とする。本年度は、小児期発症の難治性ネフローゼ症候群(ステロイド抵抗性)6症例に対してリツキシマブ投与を行い、その有効性を後方視的に検討してまとめたので報告する。組織型は5例が巣状分節性糸球体硬化症、1例が微小変化型で、リツキシマブの投与法は4例が375mg/m^2単回投与、2例が4回投与であった。その結果、4例が有効(完全寛解2名、不完全寛解2名)、2例が無効であった。B細胞枯渇機関は平均3ヵ月であった。有効例のうち3名が再発し、追加投与を行った2例は完全寛解した。無効例は有効例と比較してリツキシマブの血中濃度が低く、原因として尿中への多量の漏出が考えられた。なお、無効例のうち1例はWT-1遺伝子異常であることが判明した。本研究の結果から、難治性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群患者に対するリツキシマブ療法は有効であると考えられるが、治療前に蛋白尿を減らし、リツキシマブの尿中への漏出を最小限にする工夫や、不完全寛解例に対するステロイドパルス療法などの後療法の試みなどを検討することが重要であると思われた。今回の結果もふまえ、医師主導型治験「小児難治性ネフローゼ症候群に対するリツキシマブ療法」に登録された患者におけるリンパ球表面抗原やサイトカインの解析を、B細胞活性化マーカーおよびそれに伴うT細胞やサイトカインの変化に注目し、臨床経過との関連とあわせて検討している。
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