これまでの研究成果は以下の通りである。 原因不明の知的障害児およびその家族13例と健常者2例からBリンパ芽球細胞株を樹立し、モナストロール処理による単極性染色体整列異常およびサイトカラシンB処理による姉妹染色分体の凝縮異常の解析を行った。各検体とも、モナストロール処理は250細胞以上、サイトカラシンB処理は200細胞以上の解析を行った。その結果、健常者では、染色体整列異常頻度が約11%、姉妹染色分体の凝縮異常頻度が約6%であった。 一方CHD異常症では、染色体整列異常頻度が健常者の約2~4倍認められたが、姉妹染色分体の凝縮異常頻度は、健常者と同率であった。また、臨床所見の異なる小頭症3例(小頭症1;-4SD、小頭症2;-4SD、小頭症3;-5SD)において、染色体整列異常頻度は、小頭症1で健常者の約2倍、小頭症2で約3倍認められたが、小頭症3は健常者と同率であった。さらに、姉妹染色分体の凝縮異常頻度は、小頭症1と2で健常者の約2倍認められたが、小頭症3は健常者とほぼ同率であった。 以上の結果、モナストロール処理やサイトカラシンB処理により、これまで原因不明とされてきた知的障害の病因に、染色体サイクルの異常が関与する可能性があることが示唆された。さらに、同一疾患でも上記の検査結果が異なる場合は、その病因が異なる可能性が示唆された。
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