研究概要 |
妊娠中の低コレステロール状態が胎仔の中枢神経系の発生・発達に及ぼす影響について検討するため、妊娠3日目(GD3)のWistar-Hannoverラットにコレステロール合成阻害剤であるAY9944(75mg/kg)を経胃投与した。対照群母獣には蒸留水を投与した。また、脳発達期にセロトニン(5-HT)合成が低下した場合、生後の5-HT神経がどのような影響を受けるかについて調べるため、5-HT合成阻害剤であるpara-chlophenylalanin(PCPA, 50mg/kg/day)を、SDラットに対しGD10~20の期間、腹腔内投与した。対照群にはSalineを投与した。AY9944投与母獣のコレステロール値は、GD12で対照群の48.6%、GD20で対照群の56.2%であり、投与後は中程度のコレステロール低下状態を継続していた。先天性にコレステロール合成酵素を欠損したマウスでは、5-HT神経系の過形成が報告されている。ところが胎生期AY9944曝露ラット脳で5-HT神経の免疫組織化学的観察を行ったところ、5-HT神経細胞数に変化は認められなかった。よって、中程度の低コレステロール状態では、仔の5-HT神経系の発達にそれほど大きな影響を及さないことが示唆された。また、PCPA曝露胎仔は脳内5-HTおよびその代謝産物、さらにドーパミンとその代謝産物の量が有意に低下していたが、成熟したPCPA曝露ラットでは全脳ではモノアミン量に有意な変化は認められなかった。しかし、高架式T字迷路試験によりConditioned fear(条件付け恐怖)を評価したところ、受動的回避行動が促進されていた。よって、胎生期の脳内5-HTおよびDA量の減少は生後の不安様行動に影響を与えることが示唆された。
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