本研究は中枢神経系におけるビオプテリン誘導体と一酸化窒素(NO)の役割を特に低酸素虚血において明らかにすることを目的とする。 周産期における低酸素性虚血性脳症は重篤な神経学的後遺症を残すことが知られており、社会的に大きな問題となっている。低酸素性虚血性脳症は有効な治療法が確立されておらず、その解決は急務である。テトラヒドロビオプテリン(BH4)はNO合成系のco-factorとして知られている。NO合成酵素(NOS)には神経に発現するneuronal NOS(nNOS)と血管内皮に発現するendothelial NOS(eNOS)のほかに主にマクロファージで発現するinducible NOS(iNOS)の三種類が知られている。NOは神経伝達物質としての作用や殺菌物質としての作用など多彩な働きが知られている。我々は新生仔ブタの低酸素虚血モデルを用いた研究で大脳皮質ニューロンにnNosだけではなくiNosが発現することを見いだした。 本年度においては、低酸素虚血負荷ブタモデルを用いて、低酸素虚血により血中ビオプテリン濃度は上昇するが、ビオプテリン合成系の律速酵素であるGTPCH酵素の阻害剤(DAHP)投与により血中ビオプテリン濃度が低下することを確認した。また、新生児臍帯血について、ビオプテリン、ネオプテリン濃度の測定を試みた。ラット低酸素負荷モデルについては、8週齢のラットを用いて実験系を作成した。
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