平成21年度以降の研究計画に基づき、Tyr::Creを交配した動脈管の特定の細胞集団特異的コンディショナルノックアウトマウスの解析を行った。色素細胞関連遺伝子であるEdnrb遺伝子が関与していることが考えられたため、Ednrb-Floxedマウスとの交配実験を行い、心臓の機能等を解析いたところ、大きな変化は認められなかった。PDAモデルマウスTyr::Cre;β-catFloxEx3マウスにおける、動脈管開閉因子についての発現解析を行ったところ、Cox-2遺伝子の発現量が増大していた。また、さらなる開閉因子の発現解析を行ったところ、Ep4r遺伝子の発現料も増大していた。この結果は、本PDAモデルマウスでは、動脈管開閉因子の発現量の変化がPDAを発症させる原因であることを示唆している。これらβ-catenin遺伝子の作用がどのようなタイミングで作用するのかを明らかにするため、タモキシフェン誘導性コンディショナルノックアウトマウスTyr::Cre-ERT2;β-catFloxEx3を作成、解析したところ、少なくとも生後にβ-cateninの機能を活性化してもPDAの発症は観察されなかった。この結果は、β-cateninによる作用が胎児期に大きく作用している可能性を示唆している。また、ドップラーエコー画像解析法を用いた解析から、本モデルマウスは動脈管開存だけでなく、右心房から左心房へのシャントが観察された。さらには、PDA発症後の本モデルマウスでは、左心房に血栓を持つ個体が多く観察され、これらの血栓も本モデルマウスの寿命を短くする一因である可能性が示唆された。
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