生後発達過程での種々のストレスが視床下部における摂食行動調節のネットワーク機構の出生後発達に与える影響を分子レベルで解明することによって、生後発達過程でのストレスが生活習慣病の発症に関与する機構の病態解明やその予防を目的とした研究を行った。また神経科学的方法を駆使することより、小児生活習慣病の病態と神経系の発達にストレスが如何に関与するのかという二つの異なる側面からの研究の統合という点が特色があり、胎児期、授乳、離乳の時期も含めた摂食調節機構の複雑なネットワーク形成の出生後発達の機構を実証することにより、小児を取り巻くストレス環境の変化が中枢神経系での調節機構の発達への影響を解明している。出生後発達過程での発現動態の生理的変動を免疫組織化学染色法などの生化学的手法、In situハイブリダイゼーション法、ノーザンプロット解析、リアルタイムRT-PCRなどの分子生物学的手法とを組み合わせ、蛋白発現、遺伝子発現の両方のレベルで検討を行った。母仔分離による視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸の変動は、ストレス反応や摂食行動の調節機構としても作用しており、出生後5、10日目の仔ラットを24時間母ラットから一定温度(5日目 : 34℃、10日目 : 33℃)に保温した保湿器に分離し、その際の視床下部での摂食調節物質[Orexln、Neuropeptide Y(NPY)、Neuropeptide W(NPW)、Galanin、POMC、Galanin like peptide(GALP)、Neuromedin-U(NMU)]やその受容体の発現の変動を検討している。下垂体においては、視床下部と下垂体に共通して存在するペプチドである〔GALP、NMU〕を視床下部の場合と同様に検討している。また、出生後早期である8日目まではそのダイナミックな予想される変化から、連日の仔ラット切片でその変化を確認しつつある。さらに、下垂体後葉に存在するarginine vasopressin、oxytocinを検討し、浸透圧調節との関連性を確かめている。
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