胎児期や新生児期には視床下部神経細胞の髄梢化や軸索形成によるネットワーク形成の時期に当たり、摂食調節機構も複雑な調節機構が完成する。一方で、ストレスは一過性の食欲低下・食欲亢進と慢性的な拒食・過食の原因もしくは誘因となると考えられる。我々は胎児期、授乳、離乳の時期も含めた摂食調節機構の複雑なネットワーク形成の出生後発達の機構が解明され、また小児を取り巻くストレス環境の変化が中枢神経系での調節機構の発達の異常を来たすメカニズムが解明されることを目的として研究を進めた。 A.視床下部、下垂体、延髄における摂食調節あるいはストレス関連ペプチド及びその受容体の遺伝子発現および蛋白発現の出生後発達についての検討 摂食調節神経ペプチド、ストレス関連ペプチドや受容体において、ラットにおける蛋白発現、遺伝子発現の両方のレベルで検討を行った。 B.出生後早期からの代謝異常が摂食調節ペプチドの生後発達に与える影響 2型糖尿病モデルラットと視床下部性肥満モデルラットを用いて視床下部における摂食調節物質(オレキシン、NPY、ガラニン、POMC、GALP、NMU、MCH、Nesfatin-1)やその受容体の遺伝子発現および蛋白発現の動態を詳細に検討した。 そのメカニズムの解明は小児科に関連する基礎医学の進歩に特に寄与すると予想され、肥満の成因と合併症の成因解明の観点から、予防医学的成果や治療的成果が得られる可能性が高いと考えている。
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