研究概要 |
発がんは、複数の遺伝子異常が同一の細胞内に蓄積することにより誘発される。遺伝子の塩基配列や構造の異常に加え、DNAメチル化を始めとするエピジェネティックな異常も大きな役割を果たしている。遺伝子プロモーター領域CpGアイランドのメチル化はその下流遺伝子を不活化するため,がん抑制遺伝子の不活化機構として重要である。 本研究では,悪性黒色腫におけるDNAメチル化異常について調べ,黒色腫特異的なDNAメチル化異常を黒色腫のバイオマーカーとして応用する端緒を見いだすことを目的とした。 筑波大学附属病院倫理審査委員会で承認された手続きで収集された悪性黒色腫及び色素性母斑の臨床材料を用いて,メチル化特異的PCR法によりCpGアイランドのメチル化状態を調べた。 他の多くのがんでもメチル化されることが知られているRASSF1Aは悪性黒色腫でも36%でメチル化が検出されたが,興味深いことに良性メラノサイト腫瘍である色素性母斑でも20%のメチル化が検出された。黒色腫特異的ではなくバイオマーカーとしては用いることが出来ないが,メラノサイト系腫瘍では良悪性にかかわらずRASSF1,ひいてはRAS系が重要役割を果たしている可能性が示唆された。
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