研究概要 |
前年度までの研究にて,一般に細胞増殖を抑制する蛋白と考えられているTNF-alphaにより,神経線維腫症I型患者より得た神経線維腫培養細胞において刺激濃度依存性,刺激時間依存性に増殖することを見出した。さらにTNF-αのNF細胞増殖能への影響について解析したところ,Western blottingにてNF細胞はTNF-αの刺激時に,MEK/ARKシグナル伝達経路を介して増殖することが明らかとなった. 本年度の研究では,神経線維腫内外におけるTNF-alphaおよびTNF-alphaレセプターの局在を検討するため,神経線維腫症I型患者より得られた神経線維腫培養細胞および組織において免疫染色,Western blottingなどを用いて,その局在を確認した.TNF-alphaレセプターは神経線維腫細胞に発現しているものの,神経線維腫細胞内にTNF-alphaはみられず,組織免疫染色にて神経線維腫組織内に散在性に認められる肥満細胞にのみTNF-alphaの局在が確認された.この結果より,NF組織内の肥満細胞から分泌されるTNF-alphaが腫瘍増殖に関与する可能性が示唆された.さらに抗TNF-alpha抗体,抗TNF-alpha受容体抗体を競合させたところ,神経線維主細胞の増殖は抑制される傾向にあった。 以上の結果より,今後臨床の現場において,抗TNF-alpha薬剤による治療により,神経線維腫症I型患者の神経線維腫の増殖を抑制できる可能性が示唆された。
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