Toll様受容体(TLRs)は自然免疫における病原体の認識に必須の受容体であるが、最近癌細胞におけるTLRsの発現が注目されている。以前、我々はメラノーマ細胞におけるTLRsの発現とその機能を検討し、メラノーマにおいて発現の高いTLRsはTLR2、TLR3、TLR4であること、メラノーマに発現しているTLR2、TLR3、TLR4はそれぞれのリガンドと結合することによって活性化し、NFκBやIRFを介して様々なサイトカインやインターフェロンがメラノーマ細胞から分泌されること、TLR2、TLR3、TLR4をそれぞれのリガンドで刺激することによってメラノーマ細胞自身のmigration能が亢進することを明らかにした。今回我々は、メラノーマ細胞株を用いて行ったTLR4、MyD88のRNA干渉実験を行い、TLR4、MyD88の発現を抑制することにより、メラノーマ細胞株の増殖やmigration能は抑制されることが分かった。また、SCIDマウスに、RNA干渉実験でTLR4、MyD88の発現を抑制したメラノーマ細胞株を移植したところ、コントロールの細胞に比べてTLR4、MyD88の発現を抑制したメラノーマ細胞株では細胞の増殖が抑制された。さらに、メラノーマの組織におけるTLR4の発現を免疫組織化学的に検討したところ、原発メラノーマ組織29例中26例(90%)と転移メラノーマ組織28例中26例(89%)と高率に発現していることが分かった。以上のような結果から、メラノーマの増殖において、TLR4やそのアダプター分子であるMyD88を刺激することによりメラノーマ細胞の増殖やmigration能が刺激されることが分かった。TLR4やMyD88は免疫療法や分子標的療法の有用な標的になりうる可能性があると考えられた。
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