円形脱毛症は毛包への臓器特異的自己免疫機序が想定されている。マウスを使った実験では、毛包の移植ではなく、毛包周囲のリンパ球の移入が病態を再現し、また、他の自己免疫疾患合併が多い特徴があるが、なぜ、円形脱毛症患者ではこのような自己免疫反応がおこりやすいのか、その分子メカニズムは不明である。そこで、わたしたちは免疫反応を抑制する、特殊なリンパ球集団である制御性T細胞に着目し、円形脱毛症患者では制御性T細胞が十分働かないこと(制御性T細胞不全)が、このような自己免疫のおこりやすさを説明するのではないかという仮説をたてた。 円形脱毛症患者の末梢血単核球のフローサイトメトリー解析と、円形脱毛症病変部の免疫組織学的解析により、円形脱毛症患者には、末梢血でも、組織浸潤リンパ球中でも、FOXP3+制御性T細胞の割合が有意に減少していることを見いだした。重症、慢性の患者で、より制御性T細胞は減少し、同一の患者でも、円形脱毛症の活動期に制御性T細胞は減少していた。また、病期が長期におよぶ患者群では、短期の患者群にくらべて、有意に制御性T細胞は減少していた。 重症慢性型の円形脱毛症の治療が対症的で、いまだに病因にもとづいた治療がないが、これらの所見は、制御性T細胞の局所投与が有効な治療となりうることを示唆する。
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