【目的】円形脱毛症はリンパ球を介した自己免疫機序が想定される頻度の多い炎症性脱毛である。制御性T細胞(以下Treg)は、末梢で自己免疫反応を抑制し、Tregの分化、機能に重要な転写因子FOXP3は、Tregを同定する目的で使われる。FOXP3遺伝子変異でおこるIPEXでは、Treg機能不全から多臓器に自己免疫反応と高頻度に円形脱毛症を合併し、Treg機能不全が円形脱毛症をおこす可能性が提示される。そこで、逆に円形脱毛症にTreg機能不全を合併するか、Treg機能不全が円形脱毛症の病態にどのように関与するかを調べた。 【方法】円形脱毛症患者と健常者、乾癬患者の末梢血単核球をFACS解析した。円形脱毛症と他の炎症性脱毛の毛包周囲浸潤リンパ球を免疫染色で解析した。 【結果】円形脱毛症患者末梢血中のFOXP3+細胞は健常人より有意に減少していた。円形脱毛症患者末梢血のFOXP3+細胞は急性期よりも慢性期に少なく、限局型よりも広範型症例で減少していた。また、FOXP3-CD25+細胞は健常人より有意に減少しているが、病期や脱毛範囲とは関連しなかった。毛包周囲浸潤リンパ球中のFOXP3+細胞は、他の炎症性脱毛に比べ、円形脱毛症では有意に少なかった。組織内FOXP3+細胞も、急性期よりも慢性期に少なく、限局型よりも広範型でより減少していた。これらのTregの異常は、IL-2 promotorのfunctionalなSNPと関連していた。 【結論】円形脱毛症患者の解析からIL-2 signalを軸としたCD4リンパ球の異常が組織特異的自己免疫疾患をおこすモデルを提唱する。多くの円形脱毛症は組織破壊を残さずに自然寛解する。円形脱毛症の研究によって、末梢での自己免疫寛容の獲得について今後明らかとできることを期待している。
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