研究概要 |
皮膚における核移行シグナルの役割を検討するため、各皮膚疾患の病理組織標本の免疫染色を行った。KPNA1, 2, 3, 4, 5およびCRM1, KPNBの抗体を用いて正常皮膚、尋常性乾癬、基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫、ボーエン病、メルケル細胞癌、菌状息肉症、脂漏性角化症のパラフィン切片の免疫染色を行った。その結果、KPNA2において特徴的な所見を得た。正常表皮細胞でもKPNA2は核および細胞質に軽度発現を認めたが、尋常性乾癬では基底層にKPNA2の発現が増強している細胞が増加しており、また上記各疾患における悪性腫瘍細胞ではいずれも核および細胞質に著明な発現の増強が認められた。KPNA5はその発現が免疫染色レベルでは確認出来なかった。その他KPNA1, 3, 4, CRM1, KPNBに関しては明らかな疾患特異性はなかった。これらの結果において、特にKPNA2は細胞増殖と密接に関わるのではないかと考え、HaCaT培養細胞にEGF刺激を行い細胞増殖との関連を調べることにした。EGF刺激したHaCaT細胞で細胞増殖のマーカーであるPCNAとKPNA2の抗体を用いて二重染色し、共焦点顕微鏡で観察したところ、特にM期においてPCNA、KPNA2の発現増強があり、co-localozeしていることが明らかになった。近年KPNA2が乳癌などの悪性腫瘍において発現増強が予後因子として関わっている可能性があるという報告があり、現在皮膚悪性腫瘍領域における予後因子としての有用性を検討するため、当科にて手術を行った悪性黒色腫および有棘細胞癌の原発巣、リンパ節の組織標本をKPNA2にて免疫染色し、予後との相関について統計的に検討を加えている。
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