研究課題
これまでの研究結果により、KPNA2が乾癬において基底層付近で発現が上昇しており、有棘細胞癌や悪性黒色腫などの皮膚悪性腫瘍においてもKPNA2の発現上昇が確認された。そこで細胞増殖における核移行シグナルの果たす役割について検討を行った。細胞増殖の際にKPNA2の発現が上昇する詳細なメカニズムを調べるため、HaCaT細胞を培養し、細胞増殖を促進させるサイトカインであるEGF, HGF, TGF-αをそれぞれ培地に添加して24時間後に細胞を回収した。EGF, TGF-α刺激ではKIINA2の発現量に変化は見られなかったが、HGF刺激において細胞増殖のマーカーであるPCNAの増加とともにKPNA2の発現量増加が確認された。そこで、HGF刺激によって起こる一連のシグナル伝達系がKPNA2発現に大きく関与しているのではないかと考え、現在KPNA2のプロモーター領域についてデータベースをもとに解析し、KPNA2発現をコントロールしている転写因子の検討を加えている。今後はKPNA2プロモーターのdeletion vectorを作成し、細胞増殖時にKPNA2発現を上昇させるメカニズムの特定を行う予定である。また、細胞増殖が活性化している状態において、どのような転写因子がKPNA2の働きによって実際に核へ移行し増殖を維持させているのかについて、細胞内でのタンパク結合を解析することから明らかにするため、TAP(tandem affinity purification)methodを用いてHaCaT細胞内でKPNA2と結合するタンパクを分離・精製した。HaCaT細胞におけるstably expressing KPNA2 with a C-terminal TAP-epitopetag(KPNA2-TAP)の作成を行い、コントロール用として、HaCaT細胞におけるGFP-TAP stabel cell lineを作成した。これらを細胞数1×10^8培養しTAP methodを用いてKPNA2と結合するタンパクを回収し、SDS-PAGEで展開した後銀染色を行い、特異的結合と考えられるバンドを切り出し、mass spectrometryを行いターゲットタンパクを同定した。現在同定タンパクの解析をさらに追加して行っている。これらの結果を元に、皮膚科領域における乾癬や皮膚悪性腫瘍の増殖に関する詳細なメカニズムが明らかになっていくと考えられる。
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