研究概要 |
ヒトβデフェンシン(HBD)-3はヒトβデフェンシン-1~-4の中で、グラム陰性菌のみでなく、グラム陽性菌にも強力な抗菌活性を有し、しかもその抗菌活性は塩抵抗性である1)。我々はこの強力な抗菌作用を決定付ける因子として、HBD-3のみに認められるC末端の2箇所のアルギニン残基に注目し、これらを除去したrecombinant HBD-3(desR HBD-3),およびdesR HBD3のN末端に2つのアルギニン残基を加え,元来のHBD-3と同じ電荷をもちつつ,アルギニン残基の位置を変更したNRR HBD-3を作成し、その抗菌活性をHBD-2及びHBD-3と比較した。 HBD-3 GIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCCRRKK desR HBD-3 GIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCC-KK NRR HBD-3 RRGIINTLQKYYCRVRGGRCAVLSCLPKEEQIGKCSTRGRKCC-KK desR HBD-3とNRR HBD-3の黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性はHBD-2と同程度に減弱し、また,塩化ナトリウム存在下の黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性も,共に著明に失われ,HBD-2にきわめて近いものとなった。これらにより、HBD-3のC末端のアルギニン2残基が,グラム陽性球菌である黄色ブドウ球菌に対する抗菌活性とその塩抵抗性に重要な役割を果たしており,そのメカニズムとしては単に電荷の総和のみならず,C末端領域に存在することが必要とされることが示唆された。
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