研究概要 |
皮膚の脂腺細胞(Sebocytes)は、スクアレンなどを生合成して、皮脂として皮膚表面に分泌する。我々はラットやマウスの脂腺細胞の長期間(3ヶ月以上)の細胞培養に成功し、同細胞の増殖や代謝,および形態変化などの詳細な観察が可能になった。その結果,同細胞がスクアレンやヒストンを濃縮した特異的な膜小胞(Sebosomesと命名)を大量に合成、分泌することを発見した(Nagaiら、Endocrinology 2005年)。今回我々は、皮膚の保湿、抗菌機能の役割が予想されるSebosomesを、培養細胞から調製すると、ブドウ球菌や大腸菌の増殖を抑制したので、同機構の解明のため、Sebosomesの生成・分泌および蛋白質の局在化などの分子機構について検討した。ラット初代脂腺細胞はEGF添加DMEM/F12培地で培養維持した。培地に遊離されたSebosomesは、培地を遠心分離して集めた。Organelle Lights Endosomes-GFP (Invitrogen)、Rab5b-RFPの各組み換えDNAを作製・細胞内に導入し、脂腺細胞に発現させた融合蛍光タンパク質の各局在を細胞内の蛍光で検出した。endocytosisはRITC-Dextran (Sigma)を培養液に添加し、蛍光顕微鏡で観察した。ラット培養脂腺細胞は、細胞内でSebosomesを生成し、エンドソーム膜、脂質顆粒、リソソーム膜等の複数の膜成分を含み、遊離した。この結果から、Sebosomesは膜系の複合体で構成されていることが示唆された。Rab5a-GFP及び、Rab5b-RFP融合蛍光タンパク質は、共に細胞内および遊離Sebosomesに局在した。RITC-Dextranは細胞に取り込まれた。これは、細胞内での新生タンパク質に加えて、細胞外由来分子が、エンドソームを経由してSebosomesに局在することを示唆した。
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