研究概要 |
本研究はマスト細胞が持つ未解明の機能を明らかにすることを目的としている。特に、T細胞の活性化や機能修飾への影響を明らかにすることで、アレルギー炎症性疾患や自己免疫疾患の発症・増悪の過程に関する新規の知見が得られると考えている。 本年度の研究において、マウス骨髄由来培養マスト細胞(BMMC)および腹腔マスト細胞はNotch受容体を恒常的に発現しており、NotchリガンドD111刺激によりヘルパーT細胞への抗原提示に必要なMHC class II分子および補助刺激分子OX40リガンドの発現が誘導されることを明らかにした。D111刺激されたBMMCをオボアルブミン(OVA)ペプチド特異的T細胞受容体トランスジェニックマウスから調製したCD4^+T細胞とOVAペプチド存在下で共培養したとき、CD4^+T細胞の増殖が誘導され、増殖したT細胞の再刺激によりTh2サイトカインの産生が認められた。この結果はD111刺激されたマスト細胞は抗原提示によってヘルパーT細胞を直接活性化できることを示している。また、D111刺激されたBMMCでは、IgEレセプターの架橋刺激によって誘導されるサイトカイン、特にTNF-α,IL-4,IL-6,IL-13の産生に顕著な亢進が認められた。脱顆粒、エイコサノイド産生についてはほとんど変化がなかった。以上のことから、Notchシグナルはマスト細胞に抗原提示細胞機能の発現を誘導し、またマスト細胞自身によるTh2系サイトカイン産生を亢進させることが示された。マスト細胞がヘルパーT細胞の活性化およびTh2分化を誘導することで、T細胞が主体となる各種疾患の病態形成に関わっている可能性が示唆された。
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