本研究では、白斑症の原因の一つがメラノサイトやメラノブラストの移動の異常で生じると仮定し、その証明を行うこと、分子メカニズムを解明することを目的としている。 1) 白斑モデルマウスの胎児を用いて、メラノサイト前駆細胞の移動速度の計算を行った。メラノサイト前駆細胞を可視化し、切片を作成後、最も腹側に存在するメラノサイト前駆細胞の移動距離の計測を12.5-15.5日胚において解析した。その結果、野生型マウスに比べ、白斑マウスのメラノサイト前駆細胞の移動速度は、遅い(野生型はモデルマウスの1.5倍の速度)ことが分かった。 2) 野生型マウス由来のメラノサイト、白斑モデルマウス由来のメラノサイト培養細胞を用いて、様々な細胞外マトリックス上で移動速度の計測を行った。ファイブロネクチン上では、野生型メラノサイトのほうが移動速度が速く1)の結果と一致した。一方、コラーゲン、ビトロネクチン上では、変化がないなど、1)と一致する結果が得られなかった。本白斑マウスの解析を行う上でファイブロネクチンの存在が重要であることが分かった。 3) マイクロアレイの結果より、白斑モデルマウス由来のメラノサイトで発現量の増加あるいは減少する遺伝子の情報が得られた。その中には、細胞移動に関わる複数の遺伝子が含まれていた。それらの遺伝子の発現量をReal-time PCR法を用いて再確認を行ったところ、再現性の見られる遺伝子とそうでない遺伝子があった。個体差が原因であることも考えられるため、複数の新規メラノサイト細胞株を用いて確実な情報を得ようとしているところである。
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